□95□ みんな急いで どこへと行くの? そんなに急いで 何がお望み? 後ろに迫る何かに怯え 必死な顔で 逃げていく 死なないように 少しだけ 生きる苦痛を長く味わえるように。
□94□ 教えて ねぇ、 お願いだから 君にとって 僕はいったい何なのか 僕のことだけを 見ているのではない君と じゃれていられるほど 僕は子供じゃないし 大人でもないんだ ねぇ ねぇごめんね このままだと 全てをぶちまけてしまいそうだから 怖いんだ 今のように 話したり したりできなくなることが だから 今はごめんね 暫く嫌いでいさせて
□93□ こうして俺はパソコンの画面に苦痛を吐き出して、 一体何を期待しているんだろう。 どれだけ毒を吐いても、 どれだけ夢を吹き込んでも、 何の反応も返してこない冷たい光に向けて。 何かを、期待しているのか? 物好きな誰かが 赤の他人の苦しみにつまらない反応を返してくる ちっぽけな可能性にすがりついているのか? そう…いや、そうではないんだ。 こうしてキーボードを叩きつけて画面に人間味のない文字の列を並べて、 俺は世界との繋がりを保とうと必死なんだ。 地球だとか、国際化だとか、そんな、 実際は意味を持たないような不確かな範囲としての世界ではなく、 俺のまわりを囲んでいる 俺以外の空間として確かに存在しているこの「世界」。 この画面を文字で埋めれば埋めるほど この嘘のような世界と繋がっていられるような気がして、 俺はこんな得体の知れない箱に向かって俺の全てを語りかけている。 そうでもしないと自分が溶けだして世界と一つになってしまう気がして、 はっきりとした境界で全てを遮断しつつ、 俺は世界との繋がりを保とうとしている。 矛盾だと笑えばいい、臆病と罵ればいい。 もしお前が、外界を遮断せず己を保てるのなら。 もしお前が、 完全なる孤独の中で世界を求めずに生きられるのならば。
□92□ けちょんぱん。 …けちょんぱん。 ああ、人生よ 僕を見捨てないでおくれ 何だって世界はこんなにも 急いで急いでいるんだい? ああ、世界よ 僕を嘲笑(ワラ)わないでおくれよ だって 夜空は こんなにも 明るい 僕を ああ 僕を 僕は 自分を愛することを忘れてしまった
□91□ いつしか 季節の変わりに 何の驚きも 少しの発見も 出来なくなった 自分に気づいて 寒さに耐えた桜や 冬から醒めた蟻や じっとりとした空気や 鋭い日差しや 赤い木の葉や 舞い散る枯れ葉や 冷たい夜空や そういった物に 感動することもなく 日に日に狭くなっていく視界に 嫌気がさしたりして
□90□ 風から雨のにおいがする。 明日は明日の風が吹くとは、よく言ったもんだなと思ったりして。 何考えてんだろ、俺。 俺の悩みや決断や結果や存在は 何億年って規模の宇宙から見たらかすにもなんねぇし、 結局死ぬのに、何で頑張ったり焦ったりしてんだろって、 思うわけ。 思うと怖いんだけどな。 人は何かを信じなきゃひとりぼっちになっちまうことを知ってるんだ。 だから神様を作って天国を思い浮かべ自分に意味を求める。 そんなの何の慰みにもならねぇと知っていながら。
□89□ 君が何をしようと 僕の知ったこっちゃないけど 君が何かすると 僕は胸が苦しくなるんだ
□88□ 現実を見るのを拒みながら 夢を それが全てと言い切る度胸もない僕は 今日も ふらふら 危なっかしく生きていくことしかできないんだ
□87□ そこにある物が 本当にそこにあるのか そんなことは 誰にもわからなくて そこにある物が 誰かにも同じように見えてるのか それとも 自分だけ違う物を見ているのか そもそも 同じように見えてる人なんかが存在するのか 僕には何もわからなくて わからなくて わからないんだ。 わかるって言う 不思議な言葉は 自意識過剰な人類が 神にでもなったつもりで 作り出した 代物で そうさ そんなのただの勘違いさ でも 誰も気づかない 気づかない 自分が 気づいてないってことに
□86□ 美しい という言葉は 見かけの美しさだけに使われるわけではないから
□85□ 君の横顔が、 綺麗だ。 まだ暗い中に射す 朝日の赤が うっすらと頬を照らして ひんやりとした空気が 君の白い肌を さらに白く見せる そして 君の横顔は 綺麗だ 君のすべてが そこに現れている。
□84□ あなたは あなたが見ているあたしが ただの氷山の一角でしかないことを知らないのよ
□83□ 君の夢を 壊してるのは君さ 僕の所為にはしないでおくれ
□82□ 纏わりつく 湿った 空気 絡みつくように 離れない 放して 放して お願いだから
□81□ 人間の特性は 何が人間の特性たるかを 知らないことである
□80□ 別れを惜しむように微かに残る霧雨が、寒い。 もう桜も散ったというのに。 電車の窓がうっすらと曇って、 まるで外の寒さを強調するかのように滴が流れ落ちた。 春が訪れたのに頑なに冬を忘れようとしない今日の空が、 俺のようでおかしい。 暖かくなって芽を開いてしまうことが怖くて。 何事からも目を背けて堅く蕾に閉じこもっていれば、 傷つけることもなければ傷つくこともないから。 開くのに失敗して蕾のまま散った方が、きっと楽に死ねる。
□79□ 君の仰いだ空は暗く 僕の胸まで締め付けた こんなにずっと近く 君のこと見てたはずなのに 僕は何にも君のことなんて知らなかったんだ それだけのこと 人生なんて 人なんて 所詮そんなもの 分かっちゃいるんだ でも解れないよ それが人間って生き物なんだ
□78□ 蝋人形に成り果てた君は だからいつまでだって生きていられる
□77□ 寒い 空が 寒い 肌が 寒い 息が 寒い 心が 寒い 桜は咲いて 散ったのに
□76□ 人を操るなんて嘘みたいに簡単。
□75□ 風吹け 空に 花びらを散らして そして僕を連れていっておくれ
□74□ 雨上がりの青空 少し濁った空気 肌に纏わる湿気 ほんのり香る風 雨が降ったら きっと洗い落としてくれる 僕の過去を 消えない罪を 雨がやんだら きっと忘れ去ってくれる 僕のことを 確かな存在の 記憶を
□73□ 雨 はらはら 花びら 水に濡れて 重たくなって 落ちていく 花びら 月の光に きらきら 雨 夜の闇に ひらひら 桜 夜の影を吸い込んで 月明かりを身に纏い 幽玄に 妖艶に 桜
□72□ 空、真っ青な、空。 高く遠く突き抜けて、俺には届かない、空。 忘れたくて、忘れたつもりになって。 でも、あいつが俺の名を呼ぶ。 何度も、何度も、遠くから。 俺はその、霧の向こうから聞こえてくるような声には、 応えられない。 それは多分、怖いから。 捨て去った記憶が少しずつ戻ってくるのが、怖いから。
□71□ 薄雲に、朧月。 酒に桜。 それだけでいい。 女はいらない。 風の音。 夜の笑い声。 俺が欲しいのはそれだけだ。 ただ、つかの間の休息。 夜が明ければ、きっと赤い日が昇り、 俺はまた馬に乗り地を駆け剣を振るのだろう。 それだけの人生、 そんな生き様に不満もなかった。 …ただ、毎日訪れる時の止まったように静かな夜を、 楽しみたいと思うようになった。 戦って死ぬだけが人生ではない、と、 考えられるようにもなった。 変わったと言われれば、そうなのだと思う。 全ては、あの男に会ってからのことだった。
□70□ 夜桜、桜 薄赤く 悲しげに 儚く 朧気な 人の悲しみも 喜びも すべて吸い取って 桜 はらはらと 風に舞う 桜 見上げると 青空 冷たく 突き抜ける 青に 桜 空を透かして 舞い落ちる 桜
□69□ 桜、桜。 夜に咲く、桜。 夢に舞う、桜。 闇に散る、桜。 薄く淡い紅色が 濃紺の空を透かして 官能的な薄紫に変わる 透明な夜を斬り裂き 月の光に照らされて嘲笑(ワラ)う 桜、桜。 僕を連れて行っておくれ
□68□ 朝起きて、溜息をつく。 僕はまだ今日も生きてる。 夜眠りについて、 このまま死んでしまえればどんなに楽かといつも考える。 でも実際は死なない。 ゆっくりと、嘲るように爽やかな朝が訪れるだけだ。 死は忙しくて、僕なんかにかまっている暇はないのだろう。 きっと僕は、死ぬ価値もない人間なんだ。
□67□ 着飾って 化粧して 仮面をかぶるの 本物のあたしがばれてしまわないように
□66□ 人間最大の過ちは、 生きると言うことに意味を求めてしまったことである。
□65□ 溜まりに貯まった感情 いいかげんにしろよ 俺がおかしくなったのか 周りが狂気の沙汰なのか そんなことはどうだっていい 、と思うようになった 投げやりになって そのくせ投げたものを放っておけなくて 拾ってきて面倒みてやがる 本末転倒って奴だ、世話ねぇな わからねぇ 何でこんなにいらいらするんだろう なにかあったのか、 俺の絡まった感情を逆撫でするようなことが? 叫ぶことも出来ねぇ この息の詰まる6畳一間のアパート 畜生、いい加減にしろ なけなしの給料をはたいて買った缶ビールを呷って 俺は灰に汚れた感情を吐き出した
□64□ 君が追っているのは 僕の幻影 僕が見ているのは 君の 崩れ落ちた夢の欠片
□63□ 遠くに行きたい 電車に乗って 地図を片手に のんびり 少しずつ 全ての瞬間が 新しく輝く旅に
□62□ この世にある全てのことを経験することはできない。 どれだけ好奇心があっても。 こんなにチャンスが転がっているのに、 人を殺すこともできないんだから。
□61□ 人を好きになって、こんなに苦しくなるのは初めてのことだ。 いや、人を本当に好きになるのが初めてなのかもしれない。 別段、鬱陶しいほど常にあいつのことを考えているわけではないが、 ふとした瞬間に思い浮かぶのがあいつの笑顔だったりするあたり 結構重傷なのかもしれない。 それでも俺があと一歩を踏み出せないのは、 愛してしまって後戻りできなくなったら辛いから。 愛してしまったら今の関係には戻れないから。 そして、あいつを傷つけて壊すのが怖いから。