「帰りました」

ルセをむかえるのは叱咤の嵐。

「玄関をぬらして。早く掃除品。1箇所も汚れた跡を残すんじゃないよ。

まったく。なんて馬鹿なんだ、お前は。今日の晩飯は抜きだよ。」

・・・・馬鹿はお前だよ。ルセは心の中で呟く。

しっかり自分の分の食べ物は買ってきてある。

ルセにあてがわれたがらんどうな部屋にはかごを引っ張るためのフックのついたロープが置いてある。

部屋の窓の真下の草むらにはかごが隠してあってる背はその中に自分の食べ物を入れてから言いつけられた物だけをもって家に入る。

窓の下のかごにフックを引っ掛けてロープを手繰り寄せれば食べ物があがってくるわけだ。

金はいやというほどくれる。

ご近所の連中にルセを奴隷として扱っていることが知れたら大変だから。

おかげで服はいいものを着ているし欲しい物は何でも買える。

でも・・・ルセにとって本当に欲しい物は自由だ・・・・・。



「おい、お前傘はどうしたんだい。」

「ぬれていた猫にあげました。」

「馬鹿だねぇ。本当にお前はくずだよ、化け物。」

化け物ということばだけがルセに深く突き刺さる。

「早く夕食をお作り。1人分だよ。手抜きしたら承知しないからね。」

着替えるため階段を上る。

ルセの部屋は2階の1番奥。風呂も2階にある。

ルーベルより先には入れないが今日はもうルーベルは風呂に入っていた。

ルセの部屋にはルセがつけた鍵がかかっている。

つけたときはひどく怒られたが今は気にもとめていないようだ。

こんな時いつもルセは馬鹿はお前だよ、と呟いてきた。

もちろん心の隅で、だ。

ルセが10年間ルーベルの家にいて上手くなったことと言えば嘘と掃除くらいだ。

猫の話だって真赤な嘘である。

1日の全ての作業を終え、眠るのは12時ごろ。

仕事が早く終わらせられるようになったのももう何年も前だ。

学校は15の時までは行っていた。

最近はもう1日中家にいるので本を読みふけっているが学校ではいつも1番の成績だった。



今日もルセは眠った。


エルのことを考えながら。